泣き婆さん

<あらすじ>

京都の南禅寺の門前に、”泣き婆さん“と呼ばれるお婆さんがいました。

雨が降ったら泣き、天気が良ければ泣く。いつも泣いてばかり。

南禅寺の和尚が尋ねました。

「婆さん、お前さんはいつもなぜ泣いているのだ?」

婆さんはこう言いました。

「私には息子が二人おります。一人は雪駄屋、もう一人は傘屋を営んでおります。

良い天気の日には、傘屋は売れません。
雨の日には、雪駄屋は売れません。
これでは、息子が困っているだろう。そう思うと涙が出てしまうのです」

和尚は婆さんの話を頷きながら聞いてから、口を開きました。

「成程。確かにもっともな考えじゃ。だが、見方が下手じゃ。ワシが一ついい方法を教えよう」

「是非、教えてください」

和尚は言いました。

「世の中は幸福と、不幸ばかりが続くものではない。それは交互にやってくるのじゃ。禍福は糾える縄の如しというじゃろう。

お前さんはいつも“不幸せ”な方ばかり考えて、“幸せ”を考えとらん。

天気が良い日には雪駄屋は売れる

雨に降る日には傘屋は売れる。

どうじゃ、晴れも良し、雨も良し。そうじゃろう」

それ以降、婆さんは泣くのをやめて楽しく暮らしたのでした。

 <解釈>

「よい」「悪い」は立場によってことなるので、あなたにとっての「よい」は誰かの「悪い」かもしれない

 

 

 

オアシスの老人

<あらすじ>

二つの町に挟まれたオアシスに「1人の老人」が座っていました。
老人の前を通りかかった男が老人に尋ねました。「これから行く町はどんな町ですか?」

老人は質問に答えず、逆に聞きました。
「今までいた町は、あなたにとってどんな町でしたか?」

男はしかめっ面して「たちの悪い人間が多くて、汚い町ですよ」

老人は答えました。「あなたがそう思っているなら、次の町もたちの悪い人間が多くて汚い町だよ」

しばらくすると、さっきの男が来たのと同じ町から「別の男」がやってきました。

別の男は同じように聞いてきました。「これから行く町はどんな町ですか?」

老人は質問に答えず、逆に聞きました。「今までいた町は、あなたにとってどんな町でしたか?」

別の男は「親切な人が多くて、きれいな町です」
老人は答えました。「あなたがそう思っているなら、次の町も親切な人が多い、きれいな町だよ」

 

<解釈>
視座とは「物事を見る姿勢や態度、立場」のこと。
意識とは唯一のものではなく、物事を見る態度や立場の数だけ存在するのだ

 

 

 

ラクダと水に浮かぶ棒切れ

<あらすじ>

はじめてラクダを見た者はこの未知なものから逃げだした。ニ度目に見た者は近づいた。三度目に見た者は勇気を出して、ラクダにつける面繋(おもがい)をつくった。
慣れたということは、こんなふうに、すべてをなんでもないものにする。恐ろしく奇妙に見えたものも、続いてやってくると、私たちには見慣れたものとなる。
さて、ついでにもう一つ。見張りに立たされた人たちが遠くから海上になにかを見て、あれは強力な軍艦だ、と言った。しばらく経つと、あれは火船、ということになった。ついで、小舟、ついで雑嚢(ざつのう)となり、最後に、水に浮かぶ棒きれになった。

 

<解釈>

①初見はあてにならない

「よく」見るには①何度も見るという意味と②遠くからではなく近くから見るという2つの意味がある。

 

無関係な立場からみると立派だけど身近な関係者から見ると粗が出るということはよくあるので気をつけなければならない

 

 

六人の盲人と象

 

<六人の盲人と象>

 

ある日、6人の盲人が象を触ってその正体を突きとめようとしました。

1人目は象の鼻に触り、「象とは蛇のようなものだ」と言いました。

2人目は象の耳に触り、「象とはうちわのようなものだ」と言いました。

3人目は象の足に触り、「象とは木の幹のようなものだ」と言いました。

4人目は象の胴体に触り、「象とは壁のようなものだ」と言いました。

5人目は象のしっぽに触り「象とはロープのようなものだ」と言いました。

6人目は象の牙に触り、「象とは槍のようなものだ」と言いました。

それから6人の盲人たちは長いこと言い争い、それぞれが自分の意見を譲りませんでした。

 

<解釈>

①部分の総和は必ずしも全体にはならない

②真実を表現する方法が異なっているだけであり、真実が異なっているわけではない

③神ではない人間が把握できるのは全体の一部に過ぎないのだから、できるだけ意見を収集することが大切である

 

 

生物における「学習」とは

生物でいう「学習」は、日常的な学習とは少々意味が異なる。生後の経験によって獲得される行動様式のことを生物では「学習」とよぶ。従って、以下にあげるようなものが学習に含まれる。

イヌの口に餌が入ると唾液分泌が起こる。そこで餌を与える直前に犬にベルの音を聞かせると犬はやがてベルの音だけで唾液を分泌するようになる。このように本来の刺激(無条件刺激)によって引き起こされるある反応が、もともとそれとは無関係な刺激(条件刺激)と結びつく学習は古典的条件づけと呼ばれる。

個体の取った偶然の行動によって得られた何らかの報酬や罰を自身の行動と紐づけて学習することはオペラント条件付けと呼ばれる。例えば、レバーを押すと餌を得ることが出来る装置に空腹のネズミを入れ、偶然にレバーを押して餌を得るとネズミは積極的にレバーを押すようになる。

また、アヒルやかもなどのひなは、孵化後一定の短い期間に見た動くものの後をついて歩くようになることが知られている。この行動そのものは生得的であるが、何に追従するかは学習によって決まる。このような発育初期の限られた時間に、行動の対象を記憶し、それが長期にわたって記憶される学習は、刷り込み(インプリンティング)と呼ばれる。このように、生得的行動が学習と結びついた行動様式もある。

 

 

 

 

動的平衡と必須アミノ酸について

たんぱく質を構成する20種類のアミノ酸のうち、動物が自身の体内で合成できず、体外から取り入れなければならないアミノ酸必須アミノ酸という。人では、バリン・ロイシン・イソロイシン・トレオニン・フェニルアラニントリプトファンメチオニン・リシン、ヒスチジンの9種類を必須アミノ酸としていることが多く、これらに加え幼少期にはアルギニンも必要である。これ以外のアミノ酸は、必須アミノ酸から、あるいは有機酸にアミノ基を転移させるなどして自分で合成することが出来る。生物の体内では、絶えず、体を構成する成分が分解され、新しく合成されている。外見的に痩せも太りもしていなくても、原子や分子のレベルでは入れ替わっているのである。摂取N量が不足している場合、体構成成分のタンパク質が分解して必要な必須アミノ酸を利用されていない部分が排出N量に代わり、排出N量>摂取N量となって窒素平衡はくずれる。必須アミノ酸を各タンパク質を多量に摂取しても、やはり体を構成するたんぱく質を分解することとなり使われていない分が排出N量に加わって排出N量>摂取N量となる。では、必須アミノ酸の最低必要量を含みながら最低代謝量を上回る、多量の摂取N量があった場合はどうなるだろうか。窒素はほとんど体内に貯蔵されることなく必要量以上の分は排出N量となって窒素平衡は維持されるのである。このように健康な体は安定しているように見えても実際には完全に静的なものではなく動きのある動的な平衡状態にあるのである

 

 

 

呼吸について

①個体レベルの呼吸について

 

多細胞生物の多くは、内部細胞の呼吸のために外界から酸素を送り届ける必要がある。外界が水か空気かによってその仕組みは異なる。水生の動物では体表からの酸素の拡散では間に合わなくなり、水の溶存酸素を取り込む呼吸器が必要になる。それには鰓が用いられる。表面積を出来るだけ大きくした鰓小葉の間に水を通し、接した細胞へと酸素を取り込ませるのである。この効率を上げるため、鰓蓋などの動きにより水流を起こす。内部の組織への酸素の運搬は循環系が受け持つ。比較的小さな体の場合は循環系も単純で、開放型で、ポンプすなわち心臓は発達しないが、魚類などのように大きな体になると閉鎖型の血管系を持ち血液には酸素運搬体のヘモグロビンなどの血色素を持つ。陸上に進出すると、空気から酸素を取り込む必要が生じ、乾燥を避けるために内部をくぼませることで表面積を増やし、気管や肺が生じる。昆虫類などは、からだも小さいので気管が枝分かれして分布し、外界からの酸素を組織まで送り届ける。爬虫類・鳥類・哺乳類は胚を作り、ろっ骨を動かす呼吸運動によって空気を出し入れし、酸素と二酸化炭素の交換を促進している。肺は多くの肺胞からなり、ヒトの場合、その表面積は体表の50倍にも及ぶ。

 

②細胞レベルの呼吸について

 

呼吸は細胞が活動するためのエネルギーを有機物分解により調達する働きである。呼吸基質は細胞が取り込む様々な有機物であるがもっとも代表的なものはグルコースである。人の場合、血液中のグルコース濃度はいつも0.1%程度に保たれている。細胞内では細胞質基質の多種の酵素によって解糖系が進行し、グルコースはリン酸化された後に分解され炭素3個のピルビン酸2分子を生じる。ピルビン酸はミトコンドリアマトリックスに入り、脱炭酸・脱水素を受けてアセチルCoAになった後、オキサロ酢酸と結合してクエン酸になり、クエン酸は何種類もの脱水素酵素の働きで変化し再度オキサロ酢酸になる。この過程はクエン酸回路とよばれ、二酸化炭素を発生する。また、多数の水素が補酵素と結合した形で得られる。解糖系やクエン酸回路で脱水素化された水素は、電子と水素イオンに分かれ電子はクリステや内膜に存在する電子伝達系に渡され、シトクロムと呼ばれるたんぱく質などを伝達され、最終的には酵素に受容され、水素イオンも加わり、水を生じる。電子伝達系で多量のエネルギーが解放され、ATPが合成される。呼吸の全過程で1グルコースから38分子のATPが生成される。クリステにおけるATPの生成は解放されるエネルギーを用いて水素イオンをマトリックス側から膜間腔へ輸送することで水素イオンの勾配がつくられ、ATP合成酵素が水素イオンの勾配によって駆動しATPを合成する。