動的平衡と必須アミノ酸について

たんぱく質を構成する20種類のアミノ酸のうち、動物が自身の体内で合成できず、体外から取り入れなければならないアミノ酸必須アミノ酸という。人では、バリン・ロイシン・イソロイシン・トレオニン・フェニルアラニントリプトファンメチオニン・リシン、ヒスチジンの9種類を必須アミノ酸としていることが多く、これらに加え幼少期にはアルギニンも必要である。これ以外のアミノ酸は、必須アミノ酸から、あるいは有機酸にアミノ基を転移させるなどして自分で合成することが出来る。生物の体内では、絶えず、体を構成する成分が分解され、新しく合成されている。外見的に痩せも太りもしていなくても、原子や分子のレベルでは入れ替わっているのである。摂取N量が不足している場合、体構成成分のタンパク質が分解して必要な必須アミノ酸を利用されていない部分が排出N量に代わり、排出N量>摂取N量となって窒素平衡はくずれる。必須アミノ酸を各タンパク質を多量に摂取しても、やはり体を構成するたんぱく質を分解することとなり使われていない分が排出N量に加わって排出N量>摂取N量となる。では、必須アミノ酸の最低必要量を含みながら最低代謝量を上回る、多量の摂取N量があった場合はどうなるだろうか。窒素はほとんど体内に貯蔵されることなく必要量以上の分は排出N量となって窒素平衡は維持されるのである。このように健康な体は安定しているように見えても実際には完全に静的なものではなく動きのある動的な平衡状態にあるのである